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人が際立つ場所=奥大和の入口になる拠点『engawa』 〜ローカルメディアとして伝えたいこと〜

奥大和

文=源口葉月株式会社エヌ・アイ・プランニング
写真=北尾篤司(株式会社エヌ・アイ・プランニング

大阪の下町で育ち、神戸の大学を経て、「(株)エヌ・アイ・プランニング(以下NIP)」に勤めて今年で9年目になる。この会社に出会うまで、私は奈良に縁もゆかりもなかった。

今でも鮮明に覚えているのは、会社説明会に参加したときのこと。

社長を筆頭に、社員全員が小麦色の肌で黒光りしていて(海外研修の直後だったらしい)、何よりインパクトが強烈だった。人材を獲得するために自社を売り込む他の企業とは違い、NIPは働く人の魅力を熱弁していて、そこに惹かれたんだと思う。

NIPと言えば、月刊タウン情報『ぱーぷる』だと認識してくれている人が、奈良では多いかもしれない。私自身も入社してからの4年間は、「ぱーぷる編集部」としていろんな特集を手がけてきた。

“ラーメン特集”では1日5軒を取材し、すべてのお店でスープまで完食して胃の限界を突破したり、“奈良県39市町村企画”では、朝から晩まで県内を車で走りまわったり、NIP総動員で成人式の撮影をしたり…。いろんな世代に向けて、縛りのない、ありとあらゆる情報を届けるマスメディアだったと思う。

『ぱーぷる』が創刊したのは1998年。これまで21年間、一度も休むことなく出し続けてきたけれど、今年の3月に休刊し、WEBメディアへと移行。「日刊ぱーぷる」として再スタートした。

なぜ、雑誌としての『ぱーぷる』をやめたのか? その理由はさまざまある。

紙媒体を読む人が少なくなり、広告が売れなくなったこと、書店がどんどん減ってきたこと、コストの問題など、寂しい理由を挙げればきりがない。でも、私は伝え方を今の時代に合った形に変換したのだと思っている。奈良の地域の魅力を発信するという目的はなんら変わってないからだ。

20年以上、奈良でメディア事業をさせてもらってきた私たちがこれから本気で考えなければならないのは、雑誌としてどう続けていくかということではなく、ローカルメディアとして私たちがどう在るかだと感じている。地域を本当の意味でつなぎ、編集するために、必要なこととはなにか? 行動し、考えていかなければならない。

その新たな第一歩として担わせてもらったのが、「奥大和移住定住交流センター engawa(以下、engawa)」という“場”の運営である。

そもそも『engawa』は、「奈良県奥大和移住・交流推進室」が移住の相談窓口として運営していた施設なのだが、今年7月にリニューアルオープンを迎えるにあたり、私たちNIPが運営委託という形で入らせてもらうことになった。

『engawa』のリニューアルで大事にしたのは、あくまでもここは「訪れる人の通過点になる場所」だということ。

ここに来れば、奥大和のモノに出会え、奥大和のヒトと繋がり、奥大和の暮らしを体験できる。そんな“入口”になる拠点であってほしい。そして、奥大和の情報を伝える“場=HUB(ハブ)”として機能することで、訪れる人たちの選択肢がその先に広がっていってほしい。

そんな想いから「GOKAN で味わう奥大和」をコンセプトに掲げ、5つの行動指針を定めた。

・食 -EAT- 奥大和にある地域の宝物を食べ尽くすこと。
・旅 -TRIP- 奥大和の素敵な場所を巡ること。
・繋 -CONNECT- 奥大和に関わり人とつながること。
・働 -WORK- 奥大和の地域のために働くこと。
・生 –LIVE – 奥大和で豊かに生きること。

リニューアルと同時に、奥大和で生み出される食品雑貨・家具・木工作品の販売を始めた。現在150点を超える商品を取り扱い、地域によって異なるお茶が試飲できたり、椅子やテーブルなどを実際に使用できたり、体験してもらえるようになっている。

物販に合わせて、生産者の方や木工作家さんによる月1回のワークショップ、現地へ訪れるツアーも開催している。(http://rakuraku-entry.com/engawa)。

そのほか、施設内にはブックスペース、コワーキング(wi-fi完備)、移住相談窓口もある。

ただ商品を売るだけなら、私たちよりも得意とする会社がきっとあるだろう。もちろん商品が売れることも大事だけれど、私たちに求められているのはメディアとしての役割。奥大和で商い暮らす人たちの物語を伝えながら、彼ら・彼女らが丁寧につくるモノの裏側を知ってもらうことにこそ、本質的な価値があると思っている。

その先に、たくさんの人たちが奥大和に関する「食べる」「買う」「繋がる」「現地を訪れる」ことを選択する未来があると思う。

『engawa』という場を運営して約4ヵ月。

奥大和は「人が際立つ場所」であると実感しつつある。森の豊かな資源を活用しながら田畑を耕し、農業をする人。杉や檜を植え育てながら林業や製材業を営む人。酒・味噌・醤油を仕込むための樽をつくる職人、家具をつくる家具職人、木製の器・灯・生活雑貨を手がける作家さんなど、彼ら・彼女らの暮らし方、生き方にこそ魅力がたくさん詰まっている。

私たちのミッションは、この『engawa』をメディアとしてうまく活用しながら、その魅力を言語化、可視化すること。モノやコトの裏側にある人に光を当て、奥大和で生きる人と訪れる人がリアルにつながるきっかけの場にしていきたいと思っている。

源口 葉月

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「株式会社エヌ・アイ・プランニング」ローカルデザイン事業部所属。『奈良食べる通信』副編集長。食と農のディレクター。本・雑誌・ウェブ・動画の制作ディレクションをはじめ、イベントやワークショップの企画運営を行う。2015年より、つくる人と食べる人をつなぐ『奈良食べる通信』の制作に携わり、「再編集」をモットーに、地域のモノ・コト・ヒトづくりに取り組む。

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