戦後に住民がゼロからつくった開拓村「殿川」の、お正月の準備の風景

吉野町

写真・文・イラスト=竹内由香(さんちゅう殿川)

令和3年12月25日。今日は神社のお正月飾りをします。注連縄(しめなわ)を作り、門松を揃え、飾り付けをします。クリスマス当日ですが、そんなことよりも年末年始の準備で慌ただしいです。サンタさんの手も借りたいぐらいです。雪も降りそうなので手早く動きましょう!

注連縄から始めます。

「さぁ、今年もやりますか!」
「頑張りましょう!」

声を掛け合いながら今年は4人で作業をします。

まずはブルーシートを広げカメムシを追い出す作業から。全部追い出して綺麗にしたのに、それでもアノ特有の臭いがします…

「臭いねー。掃除したのにー。」

こんな話をしながらブルーシートの上で注連縄を作ります。

うちの村では「玉縄」という藁の紐を使って注連縄を3本作っています。

紐を1尋(ひとひろ)、1尋半、2尋の長さに切り、2本を束ねてぎゅっとねじっていきます。「尋」とは、両手を広げた長さのこと。2本の紐を1本の本縄にし、そこにまた1本紐を足して太く仕上げます。

「ねじるのはどっちだっけ?」

毎回右回りか左回りかで悩みます。そして「間違っていても殿川の神さんは許してくれるだろう」と勝手に解釈して作業を進めます。

ここ殿川は、吉野町の東の端。山の中にある戦後の開拓村です。何もないところからみんなでつくり上げた場所です。

住民数は少なく、行事も動ける人たちでなんとかしている状態です。現在は物品を購入したり簡略化できるところは変えたりと工夫して、なるべく長く行事を続けていけるようにしています。

しかし5〜6年前まではすべて手作りで注連縄を作っていて、本当に大変でした。ちょっと当時のことを思い出してみます。

まずは藁を木槌で叩いて叩いて叩きまくります。「これでもかっ!」ってぐらい叩きます。

この時点でもう「ハァハァ…」と息切れしています。これは藁の繊維を柔らかくして、編みやすく、縄が切れにくいようにする作業。叩いた藁は、確かに柔らかくしなやかになります。

次に、その叩いた藁から紐を作ります。

この紐は1本の注連縄を作るのに3本いります。藁を適量取り1束にして根本をしっかり別の紐で結びます。根本から藁をぎゅうっとねじっていき、藁がなくなる前に新しい藁を挿して足しながら長い1本の紐にしていきます。

これもまた大変で、しっかり力を入れないと綺麗にできないから、力を入れてねじります。

「力の限りっ、全力でっ、思いっきりっ!」

これをすると手のひらにマメや水ぶくれができて、指が筋肉痛になります。長い1本の紐ができたら次の紐へ。これを合計9本作ります。手が痛くて後半は力が入りませんが、それでも自分を励まし頑張って作っていきます。

毎回作りながら、祖父が昔、いとも簡単に紐を作っていたことを思い出します。軽々と綺麗な紐がしゅるしゅるとできていたなぁと。藁と両手を擦り合わせると1本の紐ができていました。それが本当に不思議で、小さな手を擦り合わせて真似をしたものです。あの時、作り方を聞いておけばよかったなぁと、いつも思います。

紐ができたら本縄にしていきます。2本の紐を根元で縛り、またぎゅうっとねじっていきます。

紐になっていますが、ここでも力を入れて2本の紐をねじって1本にしていきます。「藁を挿す必要がない=休憩がない」ので、常に力を入れ続けている状態です。もう手が痛いっ! 限界に近いです。

本縄を作ったら、3本目の紐を本縄の螺旋に添わせるようにしてはめ込んでいきます。編み目の間に巻き付けるようにすると太く綺麗にできるのですが、やっているうちに訳が分からなくなっていきます。

目の錯覚なのか疲れからか、違うところにはめ込んでいたりひとつ飛ばしたり。ここの作業は感覚で仕上げると言った方が良いかもしれません。最後に飛び出した藁をハサミで切って整えると完成です! 毎回、全身筋肉痛と手の負傷がありました。

このように女衆で注連縄を3本作り上げていましたが、今では人数も減り、玉縄を使うようになったのです。

「できたー!」
「不恰好だねぇ…」
「まぁ、良いでしょう」

玉縄を使うと1時間半程で注連縄ができました。手もマメだらけになることはありません。不恰好でも間違っていても、心を込めて編みました。神さん許してください。

さて、次は門松です。

門松と言っても皆さんが想像しているような立派な物ではありません。葉牡丹もなければ綺麗に切り揃えられた竹もありません。

まずは材料を取りに行きます。

松は山に生えています。足場が不安定な山の斜面を登り、手頃な良い木を見つけ、ノコギリで切り出します。なかなか良い木が見つからない時もあり、探すのに時間がかかります。梅も山に生えているので、良さげな枝を見繕って切り取ります。笹と南天は住民の敷地内にあるので、断ってから取らせてもらいます。

これら殿川で採れた材料を使い、高さや組み合わせを考えて飾り付けをします。

神社までの道も、アップダウンのある舗装されていない山道です。その間は一輪車に荷物を乗せて歩いて運びます。水道もないので、お湯や水も持って行かなくてはなりません。

いろいろと話をしながら20分ほど歩き神社に辿り着くと、今度は境内の掃除をします。落ち葉をかき集め、松葉を拾い、お社を拭き掃除して綺麗にしていきます。落ち葉は本当に山のようにあり、いつも「これで焼き芋をしたらおいしいんだろうな」などと思いながら掃き集めています。

掃除が終わったら持ってきた注連縄や門松を飾り付けます。高さを揃え、バランスを見て鳥居に括り付けます。他の地域の人が見たら素朴で不恰好と思われるかもしれないですが、これが殿川流です。

歩いた山道も、この神社も鳥居もすべて、当時の住民たちがイチから作り上げたものです。私が小さかった頃は、祭の時にこの神社で「ごくまき」をしていました。

「ごくまき」とは「餅まき」のことです。お祭りの前日までにみんなでお餅を作り、当日神様にお供えをした後に神社の前から撒くのです。大人も子どもも関係なく、参加者全員が盛り上がるイベントです。

これ程盛り上がるイベントはそうそうありません。投げられたお餅を空中キャッチしたり、転がった餅を拾ったりして全員でワイワイ言いながら行いました。小さかった私もビニール袋を持って参加しました。それはそれは、激しい戦いでした・・・しかし、それが楽しいのです!

戦利品の拾ったお餅は、お土産話と共に家に持って帰ります。「お餅が頭に当たったー」「コロコロと転がって来たの、それで〜」、その時の話をしながら家族でお餅を食べました。本当に楽しかったし、おいしかった! そんな楽しい思い出があるこの神社。大好きな場所です。

そこに手作りの門松と注連縄。
うん。立派なお正月の飾りができたと思います。
みんなで参拝をして終了です。

今年も皆でできました。
ありがとうございました。
また来年もできますように。
神さんにご挨拶をして下山します。

「お疲れ様でした。」
「良いお年を。」

今年も良い年になりますように!

竹内 由香

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栃木県宇都宮生まれ。3歳から吉野町で育つ。罠猟の資格を取り、新米ハンターとして修行中。殿川自治区を盛り上げるために「さんちゅう」の名前で、殿川産完熟山椒の販売を行っている。

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